内閣府知的財産戦略推進事務局に意見書を提出しました
内閣府(画像はイメージです)
5月7日、NPO法人バーチャルライツは、内閣府知的財産戦略推進事務局に対して意見書を提出いたしました。
今回の内閣府知的財産推進事務局による意見募集は、「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題等に関する論点の整理」の策定の検討に関連して行われているものです。
関連リンク: https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095230460&Mode=0
意見書
《全文》
第1章 メタバースの活用により目指すべき価値と目指すべきメタバースの理念
目指すべき価値・理念として掲げられている文中の【メタバースの活用により実現する価値】及び【目指すべきメタバースの理念】について、高く評価し、その内容に賛同いたします。
政府の政策目標は、メタバースを活用し、自己の拡張・自己実現、人の交わり・文化の融合、および価値の創出を追求するものであり、多角的な視点から見ても非常に先進的、かつ現実的であると評価することができます。さらに、目指すべきメタバースの理念として、自由な活動、多様性、安全性・安心感、創造性の4つを重視している点も高く評価いたします。
第2章 目指すべき価値を実現するためのルール形成等の在り方(基本的な考え方)
基本的な考え方及び安全・安心に過ごせるメタバース空間のためのルールの在り方に関する記述については、概ねその内容に賛同いたしますが、1点、修正提案を記載いたします。
「メタバース空間内における発生防止や事後対応を要する問題のうちでも、ユーザーの自己責任、コミュニティの自治等(のみ)に委ねることができないもの、技術(のみ)で対応できないもの等については、法的ルール(法規制、契約など)による対応が求められることとなる。それらの法的問題に対し、ソフトローによる対応とハードローによる対応、プラットフォーマーの利用規約等による対応とユーザー自身の法的対抗措置、制度による救済措置(民事上・刑事上の手続き等)を、適切に組み合わせて対応していくことが必要である。」
について
記載の趣旨には賛同できるものの、「コミュニティの自治等(のみ)に委ねることができないもの等については...」といった記載は、原則としてコミュニティの自治等による自力救済で法的課題等に対応するべきであるといった誤ったメッセージを発信することに繋がりかねないため、「プラットフォームの自治」や「コミュニティの合意」といった文言に修正することを提案いたします。また、「技術(のみ)で対応できないもの等については、法的ルール(法規制、契約など)による対応が求められることとなる。」の部分には、「ユーザー等による過度な自力救済を防ぐことも含めて」といった文言を追加することを提案いたします。
第3章 課題の所在と対応の方向性(論点の整理)
検討事項1
Ⅰ.仮想空間における知財利用と権利者の権利保護
<商品形態模倣規制による保護>及び<法制度に係る対応>について
先日、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され、商品形態の模倣行為の範囲がデジタルにも拡大される方向性が明らかになりました。報告書に記載されている『「商品」に無体物を含むかについては、まずは、逐条解説等に、無体物が含まれると記載することで解釈を明確化すること』といった提言については、全面的に賛同いたします。
一方で不正競争防止法による商品形態模倣規制は親告罪である著作権法とは違い非親告罪であり、いわゆるファンメイド等の同人創作活動が萎縮してしまう可能性があるため、その点に関する適切なフォローアップを重点的に記載することを提案いたします。
<制度の運用等に係る対応>について
「世界知的所有権機関(WIPO)における商品・サービスの国際分類の整備動向等を踏まえつつ、仮想空間の商品表示に係る運用面の整備を進めることが期待される。」とありますが、国連機関の動向を注視するといった点では、最上位機関である国連経済社会理事会やその下部機関であるCSTD(科学技術開発委員会)といった機関の動向も注視することが望ましいため、その点に関する記載を行うことを提案いたします。
<メタバースユーザーやサービス事業者等の対応>について
公衆送信に関連して政府における簡素で一元的な権利処理方策の検討について言及されていますが、特定目的における公衆送信補償金制度の検討についても記載することを提案いたします。
検討事項2
Ⅱ.他者のアバターの肖像等の無断使用その他の権利侵害への対応
課題2-1;他者のアバターの肖像・デザインの無断使用
について
報告書に記載の通り、メタバースにおいても通常のデジタルプラットフォームと同様に著作物や肖像の無断転用が容易であるという問題があります。この問題に対処するために、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づくノーティスアンドテイクダウン手続きが米国の大手メタバースプラットフォームにおいて実施されています。しかしながら、この手続は著作物の無断転用に対してのみ迅速な削除対応が可能であり、現実の肖像が無断で転用された場合には十分な対応ができないという課題が存在します。この点に関して、関連する意見を記載、または今後調査研究を行う範囲に含めることを提案いたします。
課題2-3 アバターに対する誹謗中傷等
「こうしたアバターに向けた誹謗中傷等の事案も生じているところ、これらアバターに関する人格権的な保護がどこまで及ぶのか、「中の人」への誹謗中傷等と同様に、違法行為・不法行為に位置付けることが可能か等について、議論となっている。」について
今後の議論の方向性として「さらに、アバターのキャラクターや容ぼう等に向けた誹謗中傷等について、名誉毀損や名誉感情侵害がどこまで成立し得るか、どのような場合であれば成立し得るかについて、引き続き裁判例の動向等を注視しつつ、考え方の整理が進められることが望まれる。」とあるが、考え方の整理にあたり、ソーシャルVRの発展や現状を踏まえ、「アバターが特定の個人の人格を投影したものであるかどうか」といった視点が取り入れられることを強く期待いたします。
検討事項3
Ⅱ.メタバース上の問題事案に関する現状認識
2.問題事案に対する法令規制等
①現実空間でも生じている問題事案
について、
アバターを用いた他者との性的接触を撮影された上で後に性的接触の相手方から無断でSNSに公表されるバーチャル空間上での「リベンジポルノ」に関する相談が当法人に寄せられたことがあります。現行の私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(以下、リベンジポルノ防止法)では性的な写真や動画を本人の承諾なく公開することが規制されているものの、性的接触を行っているアバターの姿態やそれに加えたユーザーの音声が公開されることに関しては原則として規制が及ばないこととなっています。
今後メタバースが一般に普及するにあたってユーザー同士の性的な関わりが増えていくことも当然に予想される中、こういった「リベンジポルノ」行為を防ぐことは喫緊の課題です。報告書ではアバターが自己の肖像となり得る可能性が示唆されていますが、このような既に発生している重大な人権侵害にも取り組んでいく旨を記載することを提案いたします。
※意見提出フォーマットの関係で、実際のフォーマットとは一部異なります。
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