「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」への反対について

現行のフリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性への反対について

NPO法人バーチャルライツ
理事長 國武悠人
事務所:千葉県印西市大塚三丁目22番地23

 NPO法人バーチャルライツ(以下、当法人)は、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局が9月14日に公表した「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」(以下、フリーランス新法)に反対の立場を表明いたします。

 当法人は、主にデジタル空間に係る各種権利擁護、文化産業振興を目的としたアドボカシー団体であるため会員の中にはフリーランスとして事業を営む者も数多く存在しており、「フリーランスの取引を適正化し、個人がフリーランスとして安定的に働くことのできる環境を整備する」という目的それ自体には強く賛同いたします。

 しかし、フリーランス新法の具体的な方向性には数多くの問題点が見受けられます。

 フリーランス新法の問題点としてまず挙げられるのは、フリーランスに係る業界団体へのヒアリング不足、及び定義の不明瞭さです。臨時国会での成立を目指し早期に施行を目指すとの一部報道がある中で、意味するところが必ずしも明らかではない事項が数多く存在するフリーランス新法に賛同の意を示すことは極めて困難です。

 実務では「他人を使用する事業者」と「他人を使用しない事業者」を区別することは非常に難しく、フリーランスの事務負担増加や、一部不利益に繋がりかねない義務事項も存在します。

 書面交付についても先ずは環境整備を促すために努力義務から行うべきであり、現時点での義務化は拙速に過ぎるとしか言いようがありません。

 これらのことから、現場に多大な混乱を起こしかねない現行のフリーランス新法に反対し、下記の通り大幅な見直しを求めます。


見直しを求める点について

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このため、他人を使用する事業者(以下「事業者」という)が、フリーランス(業務委託の相手方である事業者で、他人を使用していない者)に業務を委託する際の遵守事項等を定める。

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 「他人を使用する事業者」の意味するところが必ずしも明らかではなく、実務において「他人を使用する事業者」と「他人を使用しない事業者」を区別することは現実的には非常に困難である。業務の受託後に他人を使用することも十分に考えられるため、定義の大幅な見直しを求めたい。

 フリーランスに係る業界団体へのヒアリングが不足していると考えられるため、見直しにあたっては十分な時間を確保し、検討に検討を重ねることを求めたい。


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(1)フリーランスに業務委託を行う事業者の遵守事項

(ア)業務委託の開始・終了に関する義務

① 業務委託の際の書面の交付等

〇 事業者が、フリーランスに対して業務委託を行うときは、以下の事項を記載した書面の交付又は電磁的記録の提供(メール等)をしなければならない。

<記載事項>

・業務委託の内容、報酬額 等

〇 事業者が、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合は、上記の記載事項に加え、以下の事項を記載しなければならない。

<追加記載事項>

・業務委託に係る契約の期間、契約の終了事由、

契約の中途解除の際の費用 等

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 トラブル防止のために書面交付を促進していくことは非常に重要であるものの、急速な義務化は実務上の事務負担増加に繋がりかねない。特にフリーランス新法は成立後早期に施行されることを前提としているため、先ずは義務ではなく努力義務とすることが適当であり、この点の見直しを求めたい。


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(ウ)報酬の支払に関する義務

〇 事業者は、フリーランスに対し、役務等の提供を受けた日から 60 日以内に報酬を支払わなければならない。

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 フリーランスに対する報酬の支払は一般的に翌月末支払とする場合が多いものの、60日以内の支払を義務付ければ、フリーランスに業務を委託する事業者が下請法の対象外である親事業者から報酬の支払遅延を受けた際に一方的な不利益を被る事に繋がりかねない。フリーランスにも多様な契約、役務提供形態が存在することを踏まえ、書面に定めの無い場合にのみ役務等の提供を受けた日から60日以内に報酬を支払わなければならないという規定に変更するなど、支払に関して柔軟性を持たせる方向性での見直しを求めたい。