新たな「自殺総合対策大綱」の素案に関する意見書
提出意見
要約:多様な視点から自殺対策を進める趣旨に賛同致しますが、表現の自由を侵害するようなフィルタリングには反対いたします。加えて、普及が進むVR(バーチャル・リアリティ)やAR(拡張現実)、メタバースといった技術の活用についても検討を求めます。
第2 自殺の現状と自殺総合対策における基本認識 p.2
<新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた対策の推進>
今回のコロナ禍において、様々な分野でICTが活用される状況となった。今回の経験を生かし、今後、感染症の感染拡大が生じているか否かを問わず、国及び地域において必要な自殺対策を実施することができるよう、ICTの活用を推進する。
ICTの活用の推進自体には賛同致しますが、どのように活用していくのか具体的な検討をお願い致します。例えば、国や自治体、外郭団体などにより、ウェブサイトやオンラインの相談窓口が乱立し、対策として有効に機能しないといった状況は避けるべきです。
ICTの活用については、コミュニケーションを基本とし、当事者や医療・福祉などの専門家がインターネット上でスムーズに交流できるような取り組みを求めます。
7.社会全体の自殺リスクを低下させる
(7)ICTを活用した自殺対策の強化 p.28
(16)相談の多様な手段の確保、アウトリーチの強化 p.31
若者は、自発的には相談や支援につながりにくい傾向がある一方で、インターネットやSNS上で自殺をほのめかしたり、自殺の手段等を検索したりする傾向もあると言われている。そのため、自宅への訪問や街頭での声掛け活動だけではなく、ICT(情報通信技術)も活用した若者へのアウトリーチ策を強化する。
国や地方公共団体、民間団体による相談事業において、障害の特性等により電話や対面による相談が困難な場合であっても、可能な限り相談ができるよう、FAX、メール、SNS等の多様な意思疎通の手段の確保を図る。
インターネット上でのアウトリーチについては、NPO法人LightRing.やNPO法人OVAなどの民間団体が行ってきた政策提言がとり入れられ、若者向けの施策が広がっていることは評価致します。
上記の施策に加え、日本政府が骨太の方針でコンテンツの利用拡大に向けて積極的な推進を掲げるメタバースやVR技術についても活用することを求めます。
若い世代では、1日の大半をメタバース上で過ごしているケースもあり、技術の普及と、コロナ禍や障害の特性等の要因により、外出が困難な方へのアウトリーチとして有効であると考えます。
【参考資料】
日本政府がweb3環境整備を本格化、骨太方針を閣議決定(2022年6月8日 Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/2696ce724e46163ca0bf89d47d75eb2af12ff036
「1日の大半をバーチャル空間で過ごす人が増えると思う」流行りは一過性?「メタバース協会」批判をどう見ている? 当事者の本音(2021年12月17日 ABEMA TIMES)
https://times.abema.tv/articles/-/10008661
7.社会全体の自殺リスクを低下させる p28
(8)インターネット上の自殺関連情報対策の推進
青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律に基づく取組を促進し、同法に基づく基本計画等により、青少年がインターネットを利用して有害な情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするためにフィルタリングの普及を図るとともに、インターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動の推進等を行う。
青少年に対し、保護者によるペアレンタルコントロールや、いじめや犯罪行為を防ぐ趣旨には賛同致しますが、過度にフィルタリングを進めることで、かえって青少年の知る権利や学ぶ場を制限することには反対致します。
表現に対する過度な規制や自粛要請により、一般のクリエイターや事業者による表現の自由が侵害されるケースもあり、有害情報の規制やフィルタリングには慎重な対応をお願い致します。
参考資料:「女性の権利や社会進出を訴えたいという思いは同じだと思う」松戸市のVTuber「戸定梨香」の動画削除で、運営会社社長が全国フェミニスト議員連盟に呼びかけ(2021年9月17日 ABEMA TIMES)
https://times.abema.tv/articles/-/10000335
10.民間団体との連携を強化する p37-38
(4)民間団体の先駆的・試行的取組や自殺多発地域における取組に対する支援
国及び地域における取組を推進するため、民間団体の実施する先駆的・試行的な自殺対策や調査等を支援する。
多くの大学や民間企業によって、VRやメタバースを活用した福祉の活用が進みつつあります。現在は身体障害や介護の分野での取り組みが先行しておりますが、VR空間上での交流やコミュニケーションなどを活用した自殺対策の取り組みも今後進んでいくと考えられます。先駆的・試行的な取り組みに対し、積極的な支援をお願い致します。
参考資料:VR・メタバース福祉活用 小樽商大など共同研究(2022年4月28日 日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60373060X20C22A4L41000/
以上
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