「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見書
提出意見
要約:雑所得の範囲の明確化自体については政策目的として妥当であるが、具体の法令解釈通達については300万円という金額設定、事業者の事務負担増加、周知不足などについて懸念を表明せざるを得ず、再検討を求めたい。
別添 「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)の概要 p.2
2 改正案の概要
⑵ 業務に係る雑所得の範囲の明確化
業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化します。
また、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。
雑所得の範囲を明確化していく方向性についてはおおむね理解できるものの、「300万円」という金額はイラストレーターや作曲家、3Dモデラーのクリエイターが専業を検討する可能性が十分に存在する基準であり、特に反証がない限り業務に係る雑所得と取り扱う金額としては高すぎる設定である。また、原案の通り改正された場合、反証に係るクリエイターの事務的負担が大きく増加することが考えられる。そのため、金額設定の再検討、及び事業者の事務的負担増加に繋がらないような運用を求めたい。
また、政府は経済財政運営と改革の基本方針 2022(通称:骨太の方針)に、「クリエーターの創作活動の支援」を盛り込んでおり、クリエイターが活動しやすい社会環境(クリエイターエコノミー)を推進するとしており、経済分野に関する施策が進みつつある。このような背景がある中で、当法令解釈通達の改正案が十分な社会的、政策的合意が取れているとは到底考えることはできない。仮に改正案に修正が加えられない場合においても、今後の運用や議論において、クリエイターエコノミーの施策動向を参考とするなど、慎重な対応を求めたい。
参考資料:骨太の方針 2022、「クリエーターの創作活動の支援」を明記(2022年6月9日 PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000082387.html
別添 所得税基本通達新旧対照表
(業務に係る雑所得の例示)
35-2
(注)事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。
雑所得の範囲を明確化していく方向性にも関わらず、社会通念や反証についての記載がある上、前述の通り300万円という設定には問題があると評価せざるを得ない。再検討を含む慎重な対応を求めたい。
以上
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